母子家庭の多くは、かつては婚姻関係にある夫がいて、何らかの理由で離婚、あるいは死別等を経て現在の状態になっています。
しかし中には、婚姻関係はなく母子家庭になる方もいます。いわゆる未婚の母、ですね。
母子家庭と聞くと、どうしても離婚してそうなった、というイメージを持ってしまいがちですが、実際には未婚の母がその子供と一緒に住んでいる世帯もまた、母子家庭になります。
母子家庭は収入が少ない世帯が多いことから、国や自治体などから経済的に支援してくれる制度が沢山用意されています。多くの制度では、支援の対象となる者を「母子家庭」「父子家庭」あるいは「ひとり親」としており、「未婚の母」という表記はされていません。
では、未婚の母は、そういった支援制度を受けることはできないのでしょうか?母子家庭、あるいはひとり親世帯というのは、以前に婚姻関係があった世帯に限定されるのでしょうか?
答えはNoです。未婚の母でも母子家庭と同じように、色々な支援制度を利用することができます。では、どの制度が利用できるのでしょうか?
そこでここでは、未婚の母が利用できる経済的な支援について、詳しく見ていこうと思います。
未婚の母はどれくらいいる?
母子家庭の中でも未婚の母の家庭はイメージ的にはそれほど多くはないのでは、と思いますが、では実際はどうなのでしょう。
ちょっと古いですが、厚生労働省による平成28年度の調査では、次のようになっています。
母子世帯になった理由別の構成割合(厚生労働省は発表の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について」より抜粋)
- 離婚 79.5%
- 未婚の母 8.7%
- 死別 8.0%
- 遺棄 0.5%
- 行方不明 0.4%
- その他 2.0%
- 不詳 0.9%
母子家庭100世帯あたり8~9世帯が未婚の母、となっています。
これを多いと見るか少ないと見るかは個人差があると思いますが、結構多い、と感じた方が多いのではないでしょうか。
また、平成23年の調査では未婚の母の割合は7.8%だったので、増加していることがわかります。近年は、さらに増えていると思われます。
未婚の母で受けられる支援制度と手当は?
未婚の母で受けられる支援制度には色々とありますが、その中でも代表的な制度について、見ていきます。
ひとり親控除
まず「ひとり親控除」です。以前は未婚の母は対象ではありませんでしたが、2020年の税制改正で対象になりました。
ひとり親控除というのは、国税庁のホームページでは次のように定義されています。
【概要】
納税者がひとり親であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。なお、ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用されます。
未婚のひとり親に対する寡婦(寡夫)控除の見直しが出来て、合計の所得額が500万円以下なら、所得税で35万円の控除を受けることができます。
【対象者または対象物】
ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件のすべてに当てはまる人です。
(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
(2)生計を一にする子がいること。
この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
(3)合計所得金額が500万円以下であること。
未婚の母で、事実婚のパートナーがいない、扶養する子供がいる、所得が500万円以下であれば、ひとり親控除を受けることができる、ということですね。
保険料の猶予、免除
どの家庭でも加入する国民健康保険や国民年金は、毎年保険料を払わなくてはなりません。収入が少ない世帯では、この保険料の支払いが猶予されていたり、場合によっては免除されるようになっています。
猶予、免除になるには決められた条件に当てはまる必要がありますが、未婚の母でもその条件を満たせば問題なく適用されます。
光熱費の減免
光熱費には、電気料金、ガス料金、上下水道料がありますが、このうち、収入が少ない世帯を対象に、上下水道料の減免を実施している自治体があります。
その自治体が決めている条件に当てはまれば、未婚の母でも減免を受けることが可能です。
公共交通機関の運賃の割引等
こちらも地域によって、収入の少ない世帯を対象に、公共交通機関の運賃の割引や無料での利用を実施しているところがあります。
これらの支援を利用しても、どうしてもまだ生活が苦しい、何らかの事情で働くことができなくなり収入がなくなった、などの場合には、最後の選択として、生活保護があります。
生活保護
各種税金や医療費の免除、住まいの家賃の減免、入学準備金などの子供の学費の支給など、様々な支援を受けることになります。
これらは手当ではありませんが、生活が苦しいときに大きな助けになる制度です。
この他にも、生活困窮者自立支援制度があります。
生活困窮者自立支援制度
これは家賃の相当額の手当てがある「住宅確保給付金」、子どもの学習支援・居場所づくり・家計の相談や就労訓練支援などが用意されてます。
子供を産んでも育てるためのお金がなく生活に困っている時には、まずは衣食住を確保してから社会への復帰が行えるようなサポートが、全国各地に相談窓口が用意されているので、まずはそこで相談してみましょう。
未婚の母と母子家庭が利用できる支援制度と手当
次に未婚の母だけでなく、母子家庭なら条件を満たせば利用できる制度を見ていきます。
児童扶養手当
主にひとり親世帯を支給の対象としており、扶養する子供が一人の場合、最大で月43,000円の手当をもらうことができます。
ひとり親世帯臨時特別給付金
新型感染症の影響で収入が減ってしまった世帯が対象で、一時金として50,000円の支給を受けることができます。児童扶養手当を受給しているという条件があり、申請は不要です。
特別給付金なので継続的な支給ではなく、一時金となります。
母子家庭自立支援給付金
母子家庭の母親のスキルアップや就業をサポートする給付金です。
自立支援教育訓練給付金
対象となっている教育訓練を受けると、支払った経費の60%が給付金として支給されます。
高等職業訓練促進給付金
介護福祉士などの資格の取得を目的として、学習に必要な資金を支給してくれる給付金です。月に14万円受け取ることが出来ます。
ひとり親家庭高等学校卒業程度認定試験合格支援
高校認定の試験合格を目指す講座の受講費を補助してくれる制度です。支援の対象には、子供のほかにその親も含まれています。
支援額としては、受講費の4割、合格すると費用の2割と合計で6割、最大で15万円まで援助金が出ます。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
こちらは給付金ではなく、金利なし、あるいは低い金利でお金を貸してくれる制度です。
新たに事業を開始するときや子供の進学、スキルアップ・医療介護の資金などに使えて、内容次第では数百万円単位でも借りることが可能です。
その他の支援制度
住宅を借りることが難しい場合にも支援があり、住宅手当て以外に県営住宅・母子生活支援施設など安価で入居が出来る制度もあり、家賃を支払うことが難しい時に活用出来ます。
これ以外にも、親と子供が対象の医療費助成、ホームヘルパー・ベビーシッターの利用代金補助、こどもの学習支援など、様々な制度を独自に作っている自治体もあります。
未婚の母でももらえる手当、養育費は?
離婚で母子家庭になったとき、その理由によっては養育費をもらうことになります。養育費は正当な理由があれば法的にも認められている制度ですが、未婚の母の場合は養育費はもらえるのでしょうか?
色々な事情があったとは言え、未婚では養育費はもらえないのでは?と思っている方は多いのではないでしょうか。
結論から言ってしまうと、未婚の母でも養育費をもらうことはできます。ただし、そのためには条件があります。
それはパートナーの「認知」です。
認知というのは、パートナー(つまり子供の父親)が自分の子供であると認めることです。認知されることによって子供の戸籍の父親のところに名前が入り、法的に親子関係があることになります。
この認知が養育費をもらうためには必要なのです。
親子関係になれば父親に扶養義務が発生します。もし子供の家庭が経済的にコマているなら養育費を払う義務が生じるからです。
認知届を役所に提出し、正式に受理されれば認知は成立します。
未婚の母でも受けられる手当は一般の母子家庭と変わらない
これまで見てきたように、未婚の母で利用できる制度、受けられる制度は沢山あります。そしてそのほとんどは、一般の母子家庭やひとり親世帯の方が利用する、あるいは受けられる制度です。
このような制度は、ネットで調べても出てこないことは普通にあります。特に自治体や地方の支援団体が実施している支援は、ホームページに告知がなかったり、告知が遅れたりすることも珍しいことではありません。
そのため、機会を見て自治体などに確認するようにしましょう。