母子家庭で利用できる支援には様々な種類があります。
生活費、税金、保険料、子供の教育費など、それぞれ利用するには決められた条件に当てはまる必要がありますが、ほとんどの支援の条件に、世帯の収入、所得があります。
収入というのは、たとえば会社勤めで給料をもらっているのであれば、税引き前の金額で、そこから税金などを引いたのが所得です。そしてたいていの支援は収入と所得のうち、所得の金額を条件にしています。
母子家庭になると、多くの世帯で受給することになるのが児童扶養手当です。
児童扶養手当というのはその名の通り、子育てにかかる費用を一定金額支援してくれる制度ですが、その利用条件の一つが、やはり所得です。
いくらの所得なら児童扶養手当は受けることができるのか、ためしに厚生労働省のホームページを見てみると、所得制限限度額として収入の金額が掲載されています。しかし実際には所得の金額で判断することになっています。
収入が会社の給料だけというなら、年末に会社からもらう源泉徴収票で所得はわかりますよね。またバイトやパートになると、逆に収入はわかりますが、所得は自分で計算しなくてはいけないでしょう。そしてその手間は結構かかります。
できれば収入がいくらなら児童扶養手当がもらえるか、わかると助かりますよね。
そこでここでは、児童扶養手当がもらえる収入はいくらなのか、また、満額もらうには月収にしたらいくらになるか、具体例を紹介しながら解説していきます。
児童扶養手当を満額もらうには月収はいくらか知りたい方は、ぜひ参考にして下さいね。
児童扶養手当を満額もらうには、月収のほかにどんな条件がある?

まず児童扶養手当がもらえる条件を、おさらいを兼ねて見ていきます。厚生労働省のホームページにある児童扶養手当の説明です。
1.目的
離婚によるひとり親世帯等、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について手当を支給し、児童の福祉の増進を図る。
2.支給対象者
18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母、監護し、かつ生計を同じくする父又は養育する者。
3.支給要件
父母が婚姻を解消した児童、父又は母が死亡した児童、父又は母が一定程度の障害の状態にある児童、父又は母の生死が明らかでない児童などを監護等していること。
4.手当額
- 月額 (令和4年4月~):全部支給:43,070円 一部支給:43,060円~10,160円
- 加算額(児童2人目) :全部支給:10,170円 一部支給:10,160円~5,090円
- 加算額(児童3人目) :全部支給:6,100円 一部支給:6,090円~3,050円
5.所得制限限度額(収入ベース)
- 全部支給(2人世帯):160万円
- 一部支給(2人世帯):365万円
先にも書きましたが、ここでは収入の金額が掲載されています。しかも2人世帯のみなので、3人世帯やそれ以上はどうなるのか、これだけではわからないですよね。
また、4.手当額には、「全部支給」と「一部支給」があり、どうなると全部支給なのか、あるいは一部支給になるのか、これもわからないですよね。
そこでまず、児童扶養手当がもらえる所得と収入について、世帯の人数によってどうなるのか、見ていきます。
そして次に、全部支給と一部支給について、その境目は何なのか見ていきます。
児童扶養手当が満額もらうには、月収はどれくらい?

児童扶養手当がもらえる所得と収入は、扶養する子供の人数、全部支給か一部支給か、所得の対象者によって、下表のようになります。
児童扶養手当がもらえる所得と収入
扶養親族等 の数 | 全部支給 収入 | 全部支給 所得 | 一部支給 収入 | 一部支給 所得 |
0 | 1,220,000円 | 490,000円 | 3,114,000円 | 1,920,000円 |
1 | 1,600,000円 | 870,000円 | 3,650,000円 | 2,300,000円 |
2 | 2,157,000円 | 1,250,000円 | 4,1250,000円 | 2,680,000円 |
3 | 2,700,000円 | 1,630,000円 | 4,600,000円 | 3,060,000円 |
4 | 3,243,000円 | 2,010,000円 | 5,075,000円 | 3,440,000円 |
5 | 3,763,000円 | 2,390,000円 | 5,550,000円 | 3,820,000円 |
母子家庭で該当するのは「受給資格者本人」になりますので、そちらの金額を参照して下さい。また、扶養する子供がいると思いますので、扶養親族等の数=1以上です。
所得額の計算方法
所得額は次の計算式で算出されます。
所得額=年間の収入額+養育費ー必要経費ー社会保険料相当額ー各種控除
年間の収入額
パートやアルバイトなど、得た収入すべてを合計します。
養育費
離婚して母子家庭になり、元夫から養育費をもらっている場合は、養育費を加算します。つまり養育費は所得と見なされます。
これを加算せず児童扶養手当をもらうと不正受給となる可能性があるので、忘れないようにしましょう。
また養育費は全額が加算されるわけではなく、その8割(毎月3万円もらっているのであれば、3万円x8割=2万4千円)が加算されます。
必要経費
給与所得控除等などが該当します。
社会保険料相当額
社会保険料相当額として8万円が引かれます。
各種控除
以下の中で該当がある場合、該当に応じた金額が控除されます。
- 障がい者 270,000円
- 寡婦(夫) 270,000円
- 特別寡婦 350,000円
- 特別障がい者 400,000円
- 勤労学生 270,000円
児童扶養手当を満額もらうには月収はいくらまで?

上記表の所得と収入は年間の金額ですので、これを月収に換算すると次の様になります。
扶養親族の数 | 全部支給 月収 | 一部支給 月収 |
0 | 約101,000円 | 約260,000円 |
1 | 約133,000円 | 約304,000円 |
2 | 約180,000円 | 約343,000円 |
3 | 225,000円 | 約383,000円 |
4 | 約270,000円 | 約423,000円 |
5 | 約313,000円 | 約462,000円 |
子供が1人の場合、児童扶養手当を満額もらうには月収は約10万1千円以下になります。一部支給なら月収は約26万円以下で、母子家庭の中には該当する方がいるかもしれません。
児童扶養手当を満額もらうには、月収からどのようにして決まる?

収入が表の金額を下回れば全部支給です。一部支給は全部支給の所得限度額をベースに、次式で計算されます。
支給額=全部支給の金額ー(受給資格者の所得額ー所得制限限度額)x0.0230070+10円
児童扶養手当の一部支給停止とは?

以上、児童扶養手当を満額もらうには月収はいくらになるのか見てきましたが、この児童扶養手当、一度もらい始めたらずっともらい続けることができるわけではありません。
児童扶養手当がもらえなくなる時
児童扶養手当がもらえなくなるのは、子供の年齢が18歳を超えたり収入が増えたなど、支給の条件からはずれた時と、もうひとつあります。
それは、児童扶養手当の受給期間が5年を超えた時です。厚生労働省では以下のように規定しています。
- 児童扶養手当の支給開始月の初日から起算して5年(又は手当の支給要件に該当する日の属する月の初日から起算して7年)を経過したときは手当の額の1/2を支給停止する。
- 3歳未満の児童を育てている場合は、3歳までの期間は5年の受給期間に含めない取扱いとする。
最初は満額もらえていても5年後には半額になってしまう、ということです。
ただし全員がそうなるのではなく、適用除外とするケースも規定されています。
手当の一部支給停止の適用除外となる事由
①就業している。
②求職活動等自立を図るための活動をしている。
③身体上又は精神上の障害がある。
④負傷又は疾病等により就業することが困難である。
⑤受給資格者が監護する児童又は親族が障害、負傷、疾病、要介護状態等にあり、受給資格者が介護する必要があるため、就業することが困難である。
働いて少なくても収入があれば一部停止にはならない、ということですよね。それなら多くの母子家庭の方は安心でしょう。