母子家庭に食品を支援してくれるフードバンクとは?

母子家庭は、日本の子どもの貧困の最大の要因と言われています。

厚生労働省が2020年に公表した「2019年国民生活基礎調査」によると、2018年度のひとり親世帯の貧困率は48.3%で、約半数が相対的貧困の状態です。養育費が支払われなかったり、病気や新型感染症の影響で就業が難しいなど、さまざまな困難に直面しています。 

そんな母子家庭に対して食品支援を行う、フードバンクが今注目されています。

フードバンクとは、企業や個人から寄付された食料品を、必要とする人々に無料で配布する活動です。日本では、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する「グッドごはん」や、社会貢献型通販モールWakeAiが推進する「WakeAiフードバンク」などがあります。

これらのフードバンクは、母子家庭に食料品を提供することで子どもの健やかな成長を支えるとともに、経済的な負担を軽減することを目指しています。

しかし、フードバンクにも課題や限界があります。

ここでは、母子家庭のフードバンクの現状と必要性、問題点について詳しく見ていきます。

目次

母子家庭のフードバンクの現状

日本では、母子家庭などのひとり親家庭を対象としたフードバンクはまだ少なく、その規模も大きくありません。

グッドネーバーズ・ジャパンは、2004年から国外の貧困や差別、教育の問題に取り組んできましたが、2017年から母子家庭などの子どもの貧困対策として「グッドごはん」を開始しました。

首都圏(東京都、神奈川県)と近畿圏(大阪府)に配付拠点を設けており、利用登録した母子家庭などのひとり親家庭に月1回食料品を無料で配布しています。

WakeAiは、2020年から「WakeAiフードバンク」を始めました。住民税非課税世帯やひとり親家庭に対して、「住民税非課税世帯・ひとり親家庭応援プラン」という名前で食品支援を行っています。

WakeAiでは、通常有料で提供している食料品や日用品などを無料で送っています。

母子家庭のフードバンクの必要性

母子家庭のフードバンクは、食品ロスの削減貧困家庭への支援という、2つの大きなメリットを持っています。

まず食品ロスの削減についてですが、日本では年間約612万トンもの食品が廃棄されています。これは世界で発生する食品ロスの約2%に相当します。

食品ロスは食料資源の無駄になるだけでなく、廃棄処分によって二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスを排出し、地球温暖化の原因にもなります。

フードバンクは安全に食べられる食料品を廃棄することを防ぎ、環境負荷を軽減することができます。

次に貧困家庭への支援についてですが、日本では、ひとり親家庭の約半数が相対的貧困の状態にあります。特に母子家庭は父子家庭よりも貧困率が高く、経済的な困難に直面しています。

母子家庭では、子育てで正社員として働くことが難しく、収入はパートやアルバイトという方は少なくありません。またここ数年は新型感染症の影響で新たな仕事に就くのが難しいなど、さまざまな要因で収入が減少したり不安定になったりします。その結果、食費や教育費などの生活必需品を切り詰めざるを得ない母子家庭世帯が増えています。

フードバンクは、このような母子家庭に食料品を無料で提供することによって、生活を支援する役目を果たしています。

食品支援によって食費が節約できれば、他の生活必需品や教育費などに充てることができる可能性も出てくるので、母子家庭にとってはとても助かる支援です。

このように、母子家庭のフードバンクは環境問題と社会問題の両方に対して有効な取り組みと言えるでしょう。

しかし、フードバンクにも課題や限界があります。そこで次に、その点について詳しく見ていきます。

フードバンクの課題と今後の展望

フードバンクは、食品ロスの削減と母子家庭など貧困家庭への支援という2つの大きな社会的価値を提供しています。しかしフードバンクにも様々な課題や限界があります。ここではフードバンクの主な課題と今後の展望について考えてみます。

フードバンクの課題

フードバンクの課題は、大きく分けて以下の3つに分類できます。

①食品提供側の課題
②食品受給側の課題
③フードバンク団体側の課題

①食品提供側の課題

  • 食品ロスを減らすための取り組みが不十分であること
  • 食品ロスを寄贈することに対するインセンティブが低いこと
  • 食品ロスを寄贈することに対する法的なリスクや責任が不明確であること
  • 食品ロスを寄贈することに対する社会的な評価や認知が低いこと

食品提供側は、食品ロスを発生させないように生産や流通の効率化や管理を改善することが求められます。

また、食品ロスを寄贈することによって得られるメリットや貢献度を高めるためには、税制優遇や社会的責任報告などの仕組みが必要です。

さらに、食品ロスを寄贈することに伴う法的なリスクや責任については、明確なガイドラインや規制が必要です。

②食品受給側の課題

  • 支援を必要とする人々の把握が困難であること
  • 支援を受けることに対する心理的な抵抗感や恥ずかしさがあること
  • 支援を受けることに対する資格や条件が不明確であること
  • 支援を受けることによって他の生活支援が減少する可能性があること

食品受給側は、支援を必要とする母子家庭の実態やニーズを正確に把握することが求められます。さらに、支援を受けることに対する恥じらいや偏見を払拭することも重要です。

また食品支援は、母子家庭などの貧困層だけでなく、災害や感染症の影響などで一時的に困窮した人々にも必要なサービスです。

③フードバンク団体側の課題

  • 資金や人材の不足による運営基盤の弱さ
  • 食品の安全性や品質の確保に関する知識や技術の不足
  • 食品提供側や食品受給側との連携やネットワークの不十分さ
  • フードバンク活動の社会的な認知度や評価の低さ

フードバンク団体は、資金や人材の確保に向けて、寄付や助成金、ボランティアやスタッフの募集などの取り組みを行う必要があります。

また、食品の安全性や品質の確保に向けて、食品衛生法やHACCPなどの知識や技術を習得し、適切な管理や配送を行う必要があります。

さらに、食品提供側や食品受給側との連携やネットワークを強化するためには、情報交換や協力体制の構築などが必要です。そして、フードバンク活動の社会的な認知度や評価を高めるためには、活動内容や成果を広く発信し、社会的な支持や理解を得る必要があります。

しかし、こういった活動は目立ちにくく、地味であまり知られることがないのが実情です。

今後の展望

食品ロスは、コンビニの廃棄問題など、報道番組などで取り上げられるようになりましたが、十分とは言えません。取り上げられると一旦はブームのように扱われますが、すぐに注目を浴びなくなります。その一方で母子家庭になる人や貧困層は増え続け、路上生活者もなかなか減りません。

食品ロスは資源の無駄遣いでやめるべき、は正論ですが、一方でそれによって生活できてる人もいるという現実もあります。

根本的な対策は政策、政治で、ということになるのかもしれませんが、生活に困っている人の救済のために、フードバンクは必要なのは間違いないでしょう。

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