日本では多くの学生が大学に進学しています。大学を出ていれば、安定した会社に就職できる、給料がいいなど理由は様々ですが、大学卒と高校卒では、卒業後に大きな差が出てくる可能性は否定できません。
母子家庭であってもそれは同じで、子供を何とか大学まで行かせたいと思っている方がほとんどではないでしょうか。
でも問題は学費です。
大学に行くには、入学金、授業料をはじめ、教材費や研究費などがかかり、しかもいずれも安くありません。また通学費や、家を離れる場合は生活費も必要で、毎月かかる費用はかなりの額になるでしょう。
だからといって、経済的な理由で子供が進学するにをあきらめたくないですよね。そういった子供の大学進学を支援してくれるのが奨学金です。
奨学金制度はかなり昔からあり、歴史のある制度なので、しくみはしっかりしています。運営は、公的機関のほか、民間の機関も沢山あります。
でも奨学金って卒業したら返済があるんでしょう?と思いますよね。
確かに奨学金の多くは貸付型で、卒業後に借りた金額プラス利子を返済しなくてはなりませんが、それとは別に、経済的に進学が困難な学生を対象にした返済不要な奨学金もあり、毎年多くの学生が利用しています。
ただ、返済不要の奨学金は利用するための条件がかなり厳しく、希望すれば誰でも、というわけではなく、それは母子家庭であっても同じです。
そこでここでは、母子家庭が利用できる返済不要の奨学金について、どのような制度があるのか、利用するための条件などについて、解説していきます。
母子家庭が利用できる奨学金、返済不要の制度は何がある?

母子家庭が利用できる奨学金で、返済不要の制度をいくつか紹介します。
全国母子系譜福祉団体協議会 「ひとり親家庭支援奨学金制度」
株式会社ローソンが、母子家庭などのひとり親家庭で就学が困難な学生の夢を応援することを目的に、2017年に創設した「夢を応援基金」です。
利用対象者
中学3年生/高校生/高等専門学校に通っている学生
応募資格
- 母子家庭または父子家庭などのひとり親世帯
- 経済的に厳しい状況(1人あたりの平均年収が100万円以上)
- 品行が良く、社会貢献に積極的な学生
支給額
30,000円/月
特徴
他の奨学金との併用ができる
各都道府県から4人選抜方式(選抜人数は毎年異なる)
JASSO(日本学生支援機構) 「高等教育の就学支援新制度」
高等教育の就学支援新制度というのは、文部科学省が令和2年4月から実施している、学生の進学を支援する制度で、その中に、JASSOが運営する返済不要の奨学金があります。
利用条件
住民税非課税世帯/生活保護世帯/児童養護施設などのサポートを必要とする学生
支給額
17,500円~75,800円/月
特徴
下宿をするなど、自宅以外の場所から通学する場合には支給額が1万円プラスされる
2020年~入学金も免除されるようになった
公益財団法人 みずほ農場教育財団
公益財団法人みずほ農場教育財団では、母子家庭・父子家庭にあって、経済的な理由で修学が困難な方に有為な人材を育成することを目的として奨学金を給付しています。(公益財団法人 みずほ農場教育財団ホームページより抜粋)
対象者
小学生/高校生/大学生/専門学校生
応募者資格
- ひとり親家庭で年収300万円以下
- 一定以上の成績がある学生
- 人物及び学業共に優れている学生
支給額
15,000円~30,000円/月
特徴
- 募集人員は100人程度と比較的多い
- 他の給付金との併用が可能
キーエンス財団 給付型奨学金
株式会社キーエンスによって2018年に設立され、安心して学業に専念できる環境つくりの一環として給付型奨学金を運営しています。
対象者
新学期に大学へ入学する学生
応募者資格
- 応募時の年齢が20歳以下
- 日本国籍を有している
- 経済的な支援を必要としている
支給額
月額100,000円×4年間
特徴
- 他の貸与型奨学金と併用可
- 授業料等減免制度と併用可
母子家庭が利用できる奨学金、返済不要の制度の審査とは?

世帯収入が少ない母子家庭だからといって、全世帯が返済不要の奨学金を受けられるわけではありません。
返済不要の奨学金を受けるには審査に合格する必要があり、対象は世帯収入や資産の要件を満たしていたり、進学先で学ぶ意欲などの項目を満たしている学生になります。
また、成績はもちろん面談やレポートを通して本人の学ぶ意欲まで対策することがポイントです。
大まかな条件はどの団体も同じではありますが、家庭状況や学生の成績などにすごく合った条件の団体を探すと、比較的スムーズに審査が通りやすくなりますよ。
母子家庭が利用できる奨学金、返済不要の制度の利用方法は?

各団体によって奨学金を申し込む方法は多少異なります。そのため、この項目では「こんな感じで利用しますよ」という大まかな申し込み方法の流れを知っていただけたらと思います。
①団体の公式サイトにアクセス
②サイト内から奨学金の申し込みを行う
③学校に必要書類を提出
④マイナンバーと身元確認書類を団体に提出
奨学金を申し込む際の注意点として、申込期間は高校3年生は4月下旬頃の1回、大学生は春と秋の2回と決められているケースがほとんどです。「絶対に奨学金を受けたい」という気持ちから、申込期間よりも早く申し込みをすることはできません。
また、マイナンバーの提出がある場合は、学生だけではなく保護者も必要になります。
母子家庭が利用できる奨学金、返済不要の制度の注意点は?

審査に通り、「奨学金を受けられるようになったから良かった」と安心するのは少し危険です。実は、母子家庭が返済不要の奨学金を受ける際に注意したい点は、5つあります。
本人所得が世帯収入に含まれる
家計の負担を少しでも助ける目的でアルバイトをしている学生は多いです。
しかしアルバイトで稼いだお金も世帯収入に含まれるため、収入基準を超えていないかを随時確認する必要があります。
収入基準としては、母子の2人世帯の場合年間最大373万円です。ただ、本人の収入が課税の対象にならなければ問題ありません。
返済不要の給付型奨学金を受けるには対象校でなければならない
返済不要の給付型奨学金は、全ての学校で導入されているわけではありません。そのため申請をする前もそうですが、何らかの理由で転校等になった場合には注意が必要です。
文部科学省のホームページには学校名で検索をかけて返済不要の給付型奨学金に対応しているのかを知ることができるシステムがあるので、申請前や転校等になった場合に利用をおすすめします。
上限額が減額されることもある
他の団体と奨学金を併用する場合、条件によっては上限額が減額されることもあります。そのため、たくさんの団体を併用すれば多くの奨学金を得られるというわけではありません。
支援停止や返還になることもある
返済不要の給付型奨学金は、審査に通れば学校を卒業するまでずっと受けられるというものではありません。
給付型奨学金の利用条件は学習意欲や優秀な成績が条件となっているため、入学後に学業を怠ってしまったり成績が著しくない場合には奨学金の支援を停止されるケースもあります。
また、定期的に適格認定という学業審査が行われているので、そこで基準に満たない場合は支援の停止や返還を求められることもあります。
在学中は対象ではない
何らかの理由により途中で奨学金の内容を変更する場合、これまで在学中に出した授業料などは対象になりません。
ただ、大学に在学している時に給付型の奨学金を申し込んだり、従来の奨学金から切り替えたりすることは可能です。
母子家庭が利用できる奨学金、返済不要の制度に落ちたら?

経済的に苦しい母子家庭では、返済不要の給付型奨学金で支援をしてもらえるのが1番ですが、審査があるため、希望者全員が利用できるわけではありません。
審査に通らなかった場合、学校の卒業後に返済が始まる貸与型給付金を利用することになりますが、国の教育ローンや学校や団体が独自に設ける奨学金など、母子家庭にも優しい低金利の貸付もあります。
うまく奨学金を利用して、母子家庭でも諦めることなく進学を目指しましょう。