今の賃貸は家賃が高い、子供の成長に合わせて引っ越しをしたい、と考えていても、経済的に苦しい母子家庭の場合は引っ越しのためのお金がなかなか工面できず、転居したくてもできないという方は少なくないでしょう。
引っ越しは一度経験するとわかりますが、意外と出費がかさむものです。引っ越し業者に依頼する費用のほかに、捨てることになった家具などの廃棄の費用、住んでいた賃貸の修繕費用、自身の移動の費用など、思っていた以上に出費があり、備えが足りなくなるといったことも起こります。
もし手持ちに不安があるのなら、どこかから借りておく、という方法もありますが、消費者金融は金利が高いので利用はしたくないですよね。親や親族に借りるのもいいのですが、後になって揉めたりすることもあって、自分の家庭だけで済む方法があれば、それが一番でしょう。
そこで引っ越しのためのお金を確保するために、都道府県や市区町村からお金を借りるという方法があります。
国や自治体では、母子家庭をはじめとするひとり親世帯を支援する制度を色々と用意していますよね。児童扶養手当など、すでに利用されている方は多いでしょう。そしてその支援制度のひとつに、母子父子福祉資金貸付制度があります。
自治体によって母子父子寡婦福祉資金貸付制度のように名前が多少異なることもありますが、この制度の転宅資金を利用することで、引っ越しの費用を借りることができます。
この制度が母子家庭におすすめなのは、自治体の運営なので貸付と言っても母子家庭にとって負担が少なくなっており、トラブルなどとも無縁で、安心して利用することができるからです。
ここではこの転宅資金について、詳しく紹介したいと思います。
母子家庭の引っ越しにおすすめの貸付、転宅資金とは?

転宅資金
先にも書きましたが、転宅資金というのは母子父子寡婦福祉資金貸付制度の中にある貸付の一つで、この制度を制定している男女共同参画局のホームページでは、「住宅を移転するため住宅の貸借に際し必要な資金」と定義しています。
簡単に言えば、引っ越し費用ということですね。
利用の条件
利用に際しては条件があります。母子父子寡婦福祉資金貸付制度は、20歳未満の子どもを扶養している母子家庭もしくは父子家庭を対象としています。そのため、母子家庭でも子供が20歳を過ぎている場合は利用できません。
貸付金額
転宅資金は最大26万円まで借りられます。
実際に引っ越しでかかるお金は状況に応じて異なりますが、それほど荷物が多くなく近距離であれば、引っ越し業者にかかる費用は数万円ほどで済むでしょう。
転宅資金が使えるのはそれだけではありません。引っ越し業者に支払う費用に加え、引っ越し先の前払いの家賃や、敷金・礼金、仲介手数料などの費用の支払いにも転宅資金を当てることができます。
そのため、貯金が少なくて引っ越しが難しいという方でも、この貸付制度を利用することで引っ越しがしやすくなりますよね。
母子家庭の引っ越しにおすすめの貸付、転宅資金の手続きは難しい?

母子家庭で転宅資金を利用したい場合はどうすればいいのでしょうか。こういった申請は手間も時間もかかるのでは?と心配になりますよね。
そこで次に、利用までの流れについて見ていきます。
自治体に相談する
最初のステップとなるのが、住んでいる自治体の担当窓口での相談です。
自治体ごとに制度の名称や申請までの流れが多少異なることもあるため、事前に確認しておくことで、スムーズに手続きを進めやすくなります。
窓口で貸付申請書を受け取って、具体的にどのような書類の提出が必要になるのか確認しましょう。
申請のための書類を用意する
転宅資金の利用で必要になる書類は、貸付申請書のほかに戸籍謄本や住民票の写し、借受人や連帯保証人の印鑑登録証明などがあげられます。ほかにも生活費の終始内訳や転居先に関する書類、引っ越しにかかる費用の見積もりなどの提出も必要です。
自治体によって異なることもあるので、申請をする自治体に確認し、漏れがないようにしましょう。
融資を受ける
申請したら、あとは融資を受けるまで待ちます。
ここで1つ注意が必要になるのが、転宅資金は申請したらすぐにお金が借りられる制度ではないことです。
書類提出後に審査を受ける期間があるため、引っ越したい直前に申請すると、引っ越しまでにお金が借りられない場合もあります。
貸付制度の利用を検討しているのであれば、早めに自治体へ相談に行って必要な書類の準備を行いましょう。
母子家庭の引っ越しにおすすめの貸付、転宅資金のメリットとは?

転宅資金は母子家庭におすすめの貸付制度ですが、その理由はいくつかあります。
無利子で借りられる
理由の一つ目は、無利子もしくは低利子でまとまった金額が借りられることです。
お金を借りるだけなら、消費者金融やカードローンなどさまざまな選択肢が存在しています。しかし民間でお金を借りる場合、利子が高くて返済の負担が大きくなり、最悪返済できなくなってしまうおそれがあります。
もし無利子、もしくは低利子でお金を借りられる制度であれば、返済の負担が最小限で済みますよね。それが転宅資金です。
転宅資金の場合、申請者が連帯保証人をたてることができれば、無利子で利用が可能です。もし連帯保証人が立てられなくても、年1.0%という低利子でお金を借りられます。
無利子なら借りた金額を返せばいいので、これ以上のメリットはないですよね。
返済期間が長い
理由の2つ目は、返済期間が長く設定されていることです。
転宅資金では、6ヵ月の据え置き期間が経過してから、3年以内で返済を終えると決められています。
これは、民間でお金を借りた場合と比較するとかなり長い返済期間なので、収入が少なく返済の余裕がない、という母子家庭でも利用しやすいのではないでしょうか。
ただ返済期間などの条件は自治体ごとに異なる場合もあるため、申請前に必ず確認が必要です。
母子家庭におすすめの貸付、転宅資金で引っ越しがしやすくなる?

今のところから引っ越しをしたいけど十分なお金がない、でも借金をすると返済が心配で利用できない、と言う方は多いでしょう。
転宅資金は、無利子、長い返済期間など、母子家庭にとってとても優しい貸付制度で、利用することに対する心理的なハードルはかなり低くなっています。
確かに借金をすることには変わりはありませんが、この転宅資金を利用することで、貯金がなくても仕事や子どもの学校の都合などに合わせて引っ越しすることができます。
これは一番利用価値のあることではないでしょうか。
そして、早めに引っ越したい場合には、制度を利用して少しでも早く転居ができるようにしましょう。
このように母子家庭で引っ越し資金がなくて困った場合、母子父子寡婦福祉資金貸付制度の転宅資金を利用することで必要なお金を確保できますが、この貸付制度は引っ越しだけではなく、子供の就学などさまざまな目的で利用できるので、困ったときは貸付制度の利用を検討しましょう。
母子家庭の場合、何でも1人でやらなければいけないと自分を追い詰めてしまう方も多くいます。困った状況に陥ったら、まずは自治体の相談窓口を利用して、貸付制度など何らかの経済的な支援策が利用できないか情報を集めることも必要です。
支援制度が用意されていても、基本的に申請しないと利用できないため、まずは情報を知ることが大切です。