母子家庭になる世帯は年々増えているといわれています。厚生労働省が毎年発表している、婚姻者数と離婚者数の統計結果によると、現在日本では3組に1人の割合で離婚するといわれています。そしてその半分以上が母子家庭になります。
母子家庭になると多くの世帯で一番の問題になるのは、収入の確保でしょう。
住まいは賃貸なら家賃がかかり、光熱費、食費や衣服、保険など、さまざまな出費が一気にやってきます。その中でも大きな割合を占めるのが、子供の教育費、学費です。
これらの出費は共働き世帯であっても大きな負担ですが、母子家庭になれば母親1人で子どもの学費をすべて負担することになり、かなり困難なことではないでしょうか。
子供の教育費は小中学校は公立に通ったとしても、高校は入学金や授業料などの学費がかかってきます。公立高校でも相応の学費ですが、もし子供が私立高校への進学を希望したとなれば、その学費の負担は一層深刻になってきます。
子供の気持ち、やる気を考えれば、子供の進みたい私立高校に行かせたいですよね。高校は将来にもつながる大変重要な時期なので、なおさらです。
今回は、そんな母子家庭で私立高校への進学を希望する方に向けて、学費を払うために利用できる国の学費免除の制度をわかりやすくご紹介していきます。
母子家庭の方以外でも年収によって利用できる制度も含まれているので、これから私立高校への進学を控えるお子さんがいる方には参考になる内容と思います。
私立高校の学費、母子家庭が免除になる制度とは?

母子家庭の方の中には、高校の授業料が免除になる制度ができたのを聞いたことがあるかもしれません。
2020年から国公立だけでなく、私立高校へ進学する学生に対しても、授業料が免除になる「授業料実質無料化」が実施されています。正式名称は、高等学校等就学支援金制度といいます。
高等学校等就学支援金制度とは
高等学校等就学支援金制度は文部科学省が管轄の制度で、ホームページでは次のように説明されています。(文部科学省ホームページより抜粋)
概要
本制度は、授業料に充てるための就学支援金を支給することにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の実質的な機会均等に寄与することを目的としています。
国公私立問わず、高等学校等に通う所得等要件を満たす世帯(※年収約910万円未満の世帯)の生徒に対して、 授業料に充てるため、国において高等学校等就学支援金を支給します。
※両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人(16歳以上)、中学生一人の子供がいる世帯
母子家庭で母親が働いて収入があり、年収が一定額未満、高校生の子供を扶養している世帯であれば利用することができます。
受給資格
以下の要件を満たす必要があります。
1.在学要件
日本国内に在住し、国公立、私立高校等に在学する方が対象です。
※高等学校等の専攻科の生徒については、令和2年度から新しく「専攻科の生徒への修学支援」が始まりました。
2.所得要件
以下の方(いずれも上記※世帯で年収約910万円未満世帯の生徒)が対象です。
「保護者等の課税標準額(課税所得額)x6% ー 市町村民税の調整控除額」が30万4,200円未満
母子家庭のほとんどはこの要件にあてはまるでしょう。
これまでは授業料が免除になるのは国公立だけでしたが、この制度を利用することで私立高校の学費も実質免除になる場合も多くなります。
支給額
2020年以前は、年収約910万円未満の子供のいる世帯に年間118,800円が国から給付されていました。この金額は公立高校の年間授業料に該当するため、実質的に授業料が免除になっていました。(年収590万円未満は年収に応じて増額。)
しかし私立高校の学費は平均して公立高校の3倍ほどになり、授業料免除とは言えない状態でした。私立高校の場合、今までは118,800円は免除になりますが、差額を各家庭で用意する必要があり、免除はあるというものの母子家庭にとってはかなりの負担になっていました。
そこで2020年からは支援額の上限の大幅な引き上げが行われ、年収が約590万円未満の世帯の場合、上限年間396,000円が給付、つまり免除される制度になりました。
これにより、母子家庭で私立高校へ進学する場合も授業料の実質無料化、免除が実現しています。もちろん私立ですのでかかる学費はこれより多くなる学校もありますが、私立高校全体で考えれば、ほぼ無料化、免除されるようになりました。
この給付金額は決められた計算式によって算出されています。給付の基本条件は日本国内に住所を所有していることなので、この部分はほとんどの母子家庭の方が該当するといえるでしょう。
実際に支払われる金額に関しては、家族構成と年収によって算出されています。
受給の手続き
入学時の4月に、申請のための書類を進学した私立高校に提出します。必要書類、期限等詳細は、各私立高校、都道府県に確認が必要です。
また、申請はオンラインでも可能になっています。「高等学校等就学支援オンライン申請システム e-Shien」 から申請できます。
私立高校の学費、母子家庭が利用できる免除は他にもある?

母子家庭では、上記に加えて以下の支援が利用可能で、実質的に私立高校でも学費が免除になります。
最初にご紹介するのは、母子家庭だから受けられる、私立高校だから、というわけではありませんが、母子家庭の場合は該当する方が多くなります。
高校生等奨学給付金
高校生等奨学給付金というのは簡単にいうと、返還が免除される給付金型の奨学金です。
低所得者を対象にした奨学金で、高校の授業料以外にかかる費用の一部を負担、免除してもらうことが可能です。国公立高校、私立高校の区別はありません。
主に対象となるのは、教科書代、学用品代(制服など)、通学にかかる費用や生徒会費、修学旅行にかかる費用なども負担、免除してもらうことが可能です。
対象となる家庭
対象となる家庭は、生活保護家庭に加え、住民税非課税世帯になります。
住民税非課税世帯に関しては家族構成により金額が異なるものの、目安として年収204万円以下であれば該当する家庭が多いでしょう。
母子家庭で生活保護を受けている、住民税非課税世帯というのであれば、利用の対象になります。
給付可能額
国公立高校と私立高校では、給付額に差があります。
非課税世帯に関しては、第一子に対して年間、国公立で11万4,100円、私立高校で13万4,600円、第二子以降は年間、国公立で14万3,700円、私立高校で15万2,000円が給付、免除されます。
年間でこれだけ大きな給付金を返却不要で負担、免除してもらえるのは、母子家庭にとっては大きな助けですよね。こちらの条件に該当すれば、教科書代や制服代は実質免除と考えてよいでしょう。
実はこの高校生等奨学給付金、毎年申告漏れがかなり多く発生している制度でもあります。せっかく用意されている国からの支援ですから、申請漏れのないように申請は余裕をもって行いましょう。
いままでご紹介してきたのは国が実施している国公立、私立高校の授業料免除の支援ですが、民間で実施されている母子家庭に対する支援も存在します。
母子父子寡婦福祉資金
この制度は母子家庭(父子家庭)で、子どもが20歳未満であれば利用できます。厚生労働省の管轄ですが、実際に申請するのは各自治体の福祉窓口になります。
連帯保証人不要で、国公立、私立高校にかかる資金を借りることができ、返却の際に利息がかからず免除されているのが特徴です。
免除ではなく貸付になりますが、私立高校入学時にはまとまった入学金がかかるので、こういった貸付をうまく利用して資金調達する必要があります。
自治体による制度
それ以外にも、自治体が独自に実施している制度に、母子家庭で私立高校に進学する子どもを対象にしている場合も多いので、住んでいる自治体に確認してみましょう。
例えば東京都では、私立高校に通う高校生を対象にした給付金があります。年収760万円未満であれば、最大35万円の返済が免除、給付されます。
また、国の教育ローンを利用する場合は、母子家庭の場合、返済方法や返済期間を家庭の事情に合わせて考慮してもらうことが可能です。
ひとり親家庭支援奨学制度
最後にご紹介するのは、一般法人全国母子寡婦福祉団体協議会とローソングループが運営している「ひとり親家庭支援奨学制度」です。
募集人数は全国で400人と狭き門ですが、この制度を利用できると月額3万円の支給が受けられます。
応募条件は、母子家庭やひとり親世帯、かつ経済的に困難なこと。社会貢献に積極的であり、品行方正な学生などの条件はありますが、採用される可能性はあるので挑戦してみる価値はありそうです。
奨学金は支給、貸付ですが、実質的な免除と言えるかもしれません。
私立高校の学費、母子家庭では免除の制度を最大限に利用して

今回は、母子家庭で私立高校の学費が免除になるのか、利用できる制度と合わせてご紹介しました。
国で実施している支援も最大限活用して学費の免除を受けることで、母子家庭の方も子供の私立高校への進学をサポートできるのではないでしょうか。