母子父子寡婦福祉資金と奨学金は併用できる?注意点は?

子供の養育費、中でも教育費は毎年増えていっています。中学から高校、高校から大学といったように、進学で教育費は一気に増えることもありますが、学校の授業料などは確実に上昇しています。

一般的な家庭でもい、教育費は生活費の中でも大きな負担ですが、これが母子家庭になると、収入に対する教育費の割合はかなりのものになり、場合によっては普段の生活を大きく圧迫する原因にもなっています。

生活のための必要経費である、衣食住が最優先になるのは当然ですが、そうなると教育費はどうしても後回しになりがちです。

しかし、教育はすぐに結果は見えませんが、子供の将来の選択に大きく影響を与えます。子供が思うような教育が受けられないと、将来も不安になりますよね。

そんな時、奨学金や自治体が実施する母子父子寡婦福祉資金の貸付金は、大きな助けとなります。

奨学金は昔からあり、存在を知っている人は多いと思います。母子父子寡婦福祉資金は、母子家庭の方なら一度は聞いたことがあるかもしれません。

どちらも誰でも利用できるというわけではなく、世帯の収入が決められた金額以下といった条件があります。その条件に当てはまらないと利用することはできません。

また、意外と見落とされがちなのは、奨学金と母子父子寡婦福祉資金、この2つを同時に利用、つまり併用できるのか、です。

子供が目指す学校に行くためには、奨学金、あるいは母子父子寡婦福祉資金単独では足りないので、できれば両方を利用したい、というケースも出てくるでしょう。

そしてその実態は、自治体によって可能であったりできなかったりと、様々です。

そこでここでは、奨学金と母子父子寡婦福祉資金を同時に利用、併用する場合について、詳しく見ていきます。

目次

奨学金と母子父子寡婦福祉資金

奨学金

民間、あるいは自治体などが運営する団体が学生に提供する教育資金です。

返済が必要な貸与型奨学金と、返済が不要な給付型奨学金があります。後者の代表的な団体が、JASS(日本学生支援機構)です。

支給額は団体によって様々で、利率、償還期間も変わってきます。

利用の条件としては、世帯の収入、世帯構成(ひとり親世帯かどうか等)、障害の有無などがあり、毎月決まった金額を支給か、授業料等かかった実費の支給を受けることになります。

母子父子寡婦福祉資金

母子父子寡婦福祉資金は、内閣府男女共同参画局が定める貸付金制度で、利用できるのは、20歳未満の児童を扶養している配偶者のない女子または男子、寡婦等となっています。

母子家庭では20歳未満の子供のいる方が対象になる、ということですよね。

この貸付金が使える対象としては、

  • 事業開始資金
  • 事業継続資金
  • 修学資金
  • 技能取得資金
  • 修業資金
  • 就職支度金
  • 医療介護資金
  • 生活資金
  • 住宅資金
  • 転宅資金
  • 就学支度資金
  • 結婚資金

があり、多岐に渡っていますが、このなかで子供の教育費として使えるのが「修学資金」です。

修学費用では、利率は無利子で償還期間は20年となっています。支給額は学校の種類によって変わりますが、具体的な支給額は後述します。

また、内閣府、つまり国が定める貸付金なので、住む場所によって条件や支給額が変わる、といったことはありません。

では、母子父子寡婦福祉資金と奨学金は併用できるのでしょうか?

母子父子寡婦福祉資金と奨学金は併用できる?

母子父子寡婦福祉資金と貸与型奨学金の併用の可否は、自治体によって取り扱いが異なります
 
例えば、埼玉県の場合は日本学生支援機構から貸与型奨学金を受けている場合、母子父子寡婦福祉資金の修学資金の貸付限度額を上限として差額を借りる事が出来ます。

一方、大阪府の場合、民間の奨学金を含め、貸付金との併用は認められていません。

このように、自治体によって母子父子寡婦福祉資金と奨学金は併用できるかどうか変わるのが、現在の実情です。

そのため、ご自身が住む地域の自治体に、併用できるのかどうか確認する必要があります。

高等教育の修学支援新制度で併用できるようになったのは本当?

文部科学省による教育制度改革の一環として、令和2年4月から、高等教育の修学支援新制度が始まりました。

高等教育の修学支援新制度

文部科学省のホームページには、次のように解説されています。

令和2年4月から実施の高等教育の修学支援新制度の概要

 政府は、平成29年12月の「新しい経済政策パッケージ」、平成30年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2018(いわゆる骨太の方針)」において、意欲ある子供たちの進学を支援するため、授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金の大幅拡充により、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化する方針を決定しました。(令和元年10月の消費税率10%への引上げによる増収分の一部を財源としています。)
 この新たな支援措置は、令和2年4月から実施しています。

高等教育の修学支援新制度は、給付型奨学金を受給しながら、授業料・入学金の免除や減免を受けられるという制度で、世帯収入と学習意欲が要件となります。

そしてこの修学支援制度では、奨学金は母子父子寡婦福祉資金の「修学資金」と併用可能になっています。

併用時の優先度

厚労省が自治体に向けて出した「母子及び父子並びに寡婦福祉資金貸付金の運用について」という通達に、具体的な運用方法が記載されています。

この中で、母子父子寡婦福祉資金の修学資金の貸付金の希望があった場合、先に修学支援制度を活用するように促す事が求められています。

つまり、優先順位は修学支援制度を利用した給付型奨学金や学費の減免の方が上となります。

借入金額上限について

母子父子寡婦福祉資金の「修学資金」には、貸付金額上限が存在します。修学支援制度と併用する場合、修学支援制度よる減免・免除された金額と奨学金の給付額が、貸与金上限から差し引かれる事になります。

貸付上限は、最も金額が大きくなる私立の自宅外通学の場合の月額で、以下の通りとなります。

  • 高校、専修学校(高等課程):52,500円
  • 高等専門学校[1~3年]:52,500円
  • 高等専門学校[4~5年]:115,000円
  • 専修学校(専門課程): 126,500円
  • 短期大学:131,000円
  • 大学:146,000円
  • 大学院(修士課程):132,000円
  • 大学院(博士課程):183,000円
  • 専修学校(一般課程):51,000円

同条件で修学支援制度を利用した場合、授業料減免が年間約70万円で月額にすると58,300円ほど、奨学金が年間75,800円となるため、合計で134,100円の支援が受けられます。

従って、貸付を受けられる金額は、

11,900円(実際の貸付金)=146,000円(貸付金上限)-134,100円(修学支援制度支援額)

11,900円まで貸付を受ける事が可能となります。

尚、貸付上限は、さかのぼって適用される場合があります。

例えば、修学支援制度による入学金などの減免が後から決まった場合、引き下げられた貸付限度額が、実際の貸付額よりも少なくなる場合があります。

そしてこの多く借りすぎていた貸付額は、すぐに返還する必要があります。

但し、生活に支障が出ないよう考慮する必要があるため、返還方法として毎月の貸与金から相殺する方法が例示されています。

給付型奨学金の利用中から切り替える

現在給付型奨学金を受給中の場合、条件を満たせば修学支援制度に切り替える事が可能です。

また、既に母子父子寡婦福祉資金の「修学資金」の貸付を受けている時も、修学支援制度を新たに利用開始する事も可能です。こちらも、切り替える途中で余分に受け取った貸付金が出た場合は、返還が必要となります。

制度の改正には注意、年度ごとに確認を

子供の教育に限らず、公的な制度は便利で大きな助けになりますが、しばしば改定が行われます。必要になった時に探し始めても、見つけ出すのはなかなか難しいものです。

自分の利用している制度に興味関心を持つ事は大切です。常時とは言わないまでも、年度替わりに確認しておくと、効率よく情報を知る事が出来るでしょう。

探すのがどうしても難しい場合は、信頼出来る行政の担当者を持つなど、自分に合った形で情報収集を行い、制度を有効に活用しましょう。

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