母子家庭の生活保護はずるいと言われる理由とは?

厚労省の令和2年資料によれば、母子家庭の母親の就労収入は平均で200万円で、女性全体の平均293万円(国税庁)を大きく下回ります。

母子家庭を支援する制度は色々とありますが、あらゆる出費を完全に補うものではありません。

また、母子家庭になった時、新しく賃貸を契約したり、子供の学費、急な病気など、様々な理由で収入が不足するケースが出てきます。

こんな時、生活破綻を防ぐセーフティネットが生活保護です。

生活保護というのは、何らかの事情で働くことができずに収入がない、あるいは働くことはできても普段の生活にも困窮するほどの収入しかない、という人を救済するための制度で、自らが申請し、審査を受けて認められれば、毎月一定の経済的な援助を国から受けられる制度です。

経済的な援助のほか、納税や医療費などの様々な支払に対し、優遇されるのも生活保護制度の一環です。

生活保護を受けている人、というと色々なイメージが沸くと思いますが、母子家庭の中にも生活保護を受けている方は少なくありません。

ですが、インターネットなどを見ると、「母子家庭の生活保護はずるい」といった、母子家庭による生活保護受給を批判する意見が散見されます。

なぜそのように言われるのでしょうか?母子家庭の方の生活はみんなが楽なわけでは決してなく、生活保護を受けないと生活していくことが難しいにもかかわらず、です。

そこでここでは、母子家庭の生活保護に関わる状況について、実態を見ていきます。そしてなぜ、母子家庭の生活保護はずるいと思われているのか、本当にそうなのか、考えてみたいと思います。

目次

母子家庭の生活保護受給はずるいと言われるのはなぜ?

母子家庭の生活保護受給についての批判で一番多いのは「ずるい」という意見でしょう。

では、この意見の元になる考えは何でしょうか。

親族の意向が大きく加わる場合もありますが、結婚も子供を作る事も、基本的には個人の意思で行われる事です。

自分で選んだ相手との結婚が結果として継続出来ず、経済的に困窮した。つまり、自己責任で困窮したというのに、納税者の税金である生活保護を受給している。そして生活保護費は、最低賃金ラインで労働する人よりも手厚い内容になりがちで、彼らよりも良い暮らしが出来る。

これらから、「ずるい」という意見が出て来ているのだと考えられます。

母子家庭の生活保護、本当にずるいのは?

生活保護は、基準を満たせば母子家庭かどうかに関わらず受給可能です。この点は異論のないところでしょう。

本当に「ずるい」のは、基準を満たしていないにもかかわらず、それを隠して受給している場合でしょう。

母子家庭に起こりがちなのは、生活保護の対象より多い一定以上の収入がある相手と同棲しているのも関わらず、それを隠して生活保護を受給し続けている場合、というのが当てはまります。

これが発覚した場合、それまで受け取った生活保護費をさかのぼって全額返還しなければならず、罰則も存在します。悪質な場合は、詐欺罪が適用される事もあります。

それに対して、離婚した元夫から養育費を受け取っている場合は、それを隠していない限り、その額に応じて生活保護費は減額されるため、「ずるい」と言われる理由は乏しいでしょう。

尚、逆に生活保護費を受け取っているからといって、養育費を減らすというのは本末転倒です。養育費ありきで生活保護費が決まると考えましょう。

不正な受給に関しては、周囲の住人から役所へ通報が入る場合もあります。生活保護を受けているはずなのにブランド品を持っているなど、どう見てもそれにふさわしくない生活をしている、といったケースです。

通報が入っても役所が直ちに動く訳ではありませんが、隠し通せるようなものではありません。毎月訪れる担当のケアマネージャーは、不正受給がないようにそういうことをとてもよく見ているので、ほどなくして気付かれるでしょう。

母子家庭の生活保護がずるいのは不公平だから?

もう1つの「ずるい」という感情は、働いていないのに所得を得ている、という不公平感ではないでしょうか。

ブラック企業や派遣労働などで、生活保護水準以下で生活する人々にとって、母子家庭に限らず生活保護受給者は攻撃が向きやすい相手です。

この感情には不公平感の他に、生活保護受給者は自分達よりも下の立場の筈だ、という劣等感も含まれるでしょう。

ですが、働いていないというのは、そもそも的外れな批判です。

結婚期間の世帯収入は、夫婦両方の働きで得られているとの前提に立てば、母子家庭の母親は、まず育児という労働を行っている事になります。

母子家庭の就労収入が女性平均よりも低いのは、正しくこの育児によって時間や労力が割かれているからと考えるべきでしょう。

また、DVなど結婚時に負った心身の傷により、働きたくても働けない状況にある場合、当然に生活保護が救うべき対象ですから、ずるいという批判は全く当たりません。

この形の「ずるい」という感情の元は、攻撃者の陥っている困窮でしょう。

本来ならば労働争議や政治への働きかけなどで解決すべきものですが、不況により解決に期待が出来ず、たまたま目に付いた母子家庭の生活保護受給者相手に八つ当たりしているのです。

母子家庭の生活保護はずるい?子供の将来にも関わります

母子家庭の生活保護受給がずるいというのは的外れな批判です。不正受給は、ずるいというより違法性の高い行為で、混同されるべきものではありません。

母親の困窮は子供の育成に影響を及ぼします。生活に困窮する時、生存に直接必要のない教育費用は削られやすいものです。

教育は子供の未来の道しるべとなるもので、これを怠れば貧困の再生産になりかねません。貧しくとも愛情をもって育てるという美談はありますが、衣食足りて礼節を知るとの言葉もあるのです。

根拠のない批判に惑わされること無く、必要な制度は正しく使っていきましょう。

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