令和2年4月から施行されている大学無償化は、学ぶ気持ちはあるけれど、経済的に苦しくて大学進学は難しい、という家庭を支援するために制定された制度ですが、これは多くの母子家庭にとって、大きな救いとなりました。
母子家庭の方が皆、経済的に苦しいというわけではありませんが、それでも毎日切り詰めて生活をされている家庭は多く、高校までは何とか行かせることができても、授業料などが一気に増える大学は難しいのが実情でした。
子供は大学に行きたいと思っていても、そういった事情であきらめざるをえないのは、国にとっても大きな損失で、大局的な観点で日本の将来のために、ということでこの制度は生まれました。
ただ、国の制度であることから、利用できる条件は厳しく、審査を受けて通る必要があります。それ以前に、どうやって申し込んだらいいのか、いまいちわかりにくい、という声もよく聞きます。
実際、「大学無償化の支援を受けたいけれど、手続きがよくわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、そのような方向けに、手続きの時期や手順について解説していきます。
これから大学無償化の手続きをされるという方や、大学無償化の支援を利用したいと考えていらっしゃる母子家庭の方は、ぜひ参考にしてみてください。
母子家庭の大学無償化の手続き、志望校は制度の対象になっていますか?

大学無償化の手続きをする前に、まず大前提として、進学を考えている学校では大学無償化の制度が利用できるのか、確認しておく必要があります。
と言いますのは、実は大学無償化の制度は、国内の大学、短大、専門学校すべての学校が対象になっているわけではないからです。
現在のところ、対象となっているのは大学・短大の98%、高等専門学校は100%、専門学校は74%となっています。専門学校を除けばほとんどの学校で利用できますが、それでも確認はしておきましょう。
専門学校では、無償化になりにくい分野もあることから、他の学校より利用できる割合は少なくなっています。
進学予定の学校が大学無償化の対象となっているかどうかは、その学校に問い合わせをすれば教えてくれますし、ホームページなどでも確認することができます。
参考までに、現在、大学無償化の対象からはずれている大学は次の9校です。(文部科学省公表)
- 東北女子大学
- 東北女子短期大学
- 上野学園大学
- 東九州短期大学
- 佐久大学信州短期大学
- 宇都宮文星短期大学
- 東京福祉大学短期大学部
- 大阪信愛学院短期大学
- 東大阪大学短期大学部
大学無償化の対象になっていない学校をめざそうとしていたのなら、場合によっては志望校を変える必要があるかもしれません。
母子家庭の大学無償化の手続きは2種類あります

大学無償化制度を利用する手続きには2種類あり、手続きも変わってきます。
1つ目が入学前から申込みができるできる「予約採用」です。2つ目が大学等に在学中に申込む「在学採用」です。「予約採用」と「在学採用」についてそれぞれ解説していきます。
予約採用
まず、「予約採用」について解説していきます。
「予約採用」は、高校3年生の春に、生徒が在籍している学校経由で申込みをする方法のことです。
手続きとしてはまず、申請書類を受け取ります。
申込のための関係書類は、在籍している学校で受け取ることができます。
書類を受け取ったら、インターネットで申込み情報を入力します。入力をしたら、在学している学校に提出書類を提出します。
審査の結果は、高校3年生の秋から冬頃にわかります。
採用通知をもらうことができれば、 その後、進学先の大学等に進学届を提出して奨学金を受け取ることができます。
続いて「在学採用」 について解説します。
在学採用
「在学採用」では、進学後に大学等を経由して年2回申込みをすることができます。予約採用で不採用になった方でも、再度申込むことができます。
在学採用の申込みの時期は、原則春と秋になります。
手続きとしては予約制と同じように、まず申請書類を受け取ります。
必要書類は、在籍している学校の奨学金窓口で受け取ることができます。
書類を受け取ったら、インターネットで申込み情報を入力します。入力が済んだら、学校が定める提出期限までに必要書類を学校に提出します。
選考の結果については、在学している学校を通じて知ることができます。選考結果の通知時期は前期は夏頃、後期は冬頃にわかります。
母子家庭の多くは仕事や家事などでとても忙しいですが、申請書類の提出は期限を過ぎると受け付けてもらえないので、必ず期限は守りましょう。このあたりはお役所仕事になるので、融通は全くきかないことを肝に銘じておきましょう。
また現在は特別措置として、新型感染症の影響により収入が減少するなど、家計が急変した世帯に対し、通年で申込みができるようになっています。
ただし注意しなければならないのが、家計が急変したときから3か月以内に申込む必要があるということです。期間内に申し込みをすれば、大学無償化制度を利用することができます。
母子家庭で自営業をして生活している方ももちろんこの特別措置の対象ですので、もし該当するのであれば、申し込むことができます。手続きは、予約採用、在学採用とも同じです。
最後に大学無償化制度を申込みをする上で、手続きのほかに気を付けなければならない点について、解説していきます。
母子家庭の大学無償化の手続き、入学費用は一旦自己負担になる?

大学無償化の申し込みをする上で気を付けなければいけないことの1つ目は、入学前に入学金や前期授業料、施設費、実習費などは準備しておく必要があるという点です。
入学金や授業料などは大学無償化の対象になっていますが、これらの費用は入学前に一旦は自分で支払うことになるので、「入学前にいくら必要なのか」について、しっかり確認し準備をしておく必要があります。
この点が母子家庭にとって、正直しんどい所でしょう。いずれもかなりの金額になるので、それまで頑張って貯めるか、一時的に親族から借りるなど、やりくりが必要になってきます。
2つ目は、「入学金はいくらもらえるのか」「授業減免の金額はいくらなのか」について確認しておく必要があるという点です。
必要な入学金、授業料より支援は少ないと、足らない分は当然自己負担です。支援金に収まる費用であれば問題ありませんが、少しくらいなら負担はできる、という母子家庭の方もいると思います。
進学する学校が国立か私立か、大学か短期大学か専門学校かなどによって入学金や授業減免の金額が異なりますので、大学等の窓口に聞く、あるいは大学のホームページなどであらかじめ確認しておくなどしておく必要があるでしょう。
