母子家庭に限った話ではありませんが、子供の進学についての悩みは就職するまで続きますよね。小学校から始まって中学校、高校、そしてできれば大学にも行かせたい、親御さんなら誰しもそう思うでしょう。
行きたい学校に行くには、子供の学力ももちろん必要ですが、親にとっての一番の悩みは学費ではないでしょうか。小学校、中学校は義務教育なので、公立に通えばそれほど学費はかかりません。高校も公立なら私立ほどはかかりません。高校まで公立で行けたとしても、問題は大学です。
大学になると、高校までと比べると国公立であっても学費はかかり、私立大学になると驚くような学費が必要な学校も少なくありません。
親御さんにとってみれば、子供には学費の少ない国公立に行って欲しいと考えますが、子供が私立大学に行きたというのであれば、できる限り子供の望みを叶えてあげたい、とも思いますよね。
とは言っても、叶えてあげたいとは思っても学費の工面がつかない、と悩む母子家庭の方も少なくないでしょう。
そんな家庭にとって利用を検討したいのが、学費免除の制度です。
学費の高額化で進学をあきらめる学生が増えていることが国会でも問題になり、ひいては国としての学力の低下をまねくおそれがあることから、学費免除の制度ができたのです。
ここでは、その学費免除の制度について、その内容、利用のための条件などを解説します。私立大学への進学を考えている母子家庭の方の参考になれば幸いです。
私立大学の学費免除、母子家庭が利用できる支援制度は?

教育に関する様々な法令を制定している文部科学省のHPを見ると
文部科学省では、しっかりとした進路への意識や進学意欲があれば、家庭の経済状況に関わらず、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校に進学できるチャンスを確保できるよう、令和2年4月から高等教育の修学支援新制度を実施しています。
とあります。
この中の「高等教育の就学支援制度」というのが、母子家庭が利用できる私立大学の学費免除の制度です。
ポイントは2つ。1つは「家庭の経済状況に関わらず」、もう1つは「しっかりした進路への意識、進学意欲」です。この2つのポイントが利用のための条件になります。
私立大学の学費免除、母子家庭が利用できる条件は?

私立大学の学費免除の条件は先にも書きましたが、文部科学省のHPでは、次のように定義されています。
- 住民税非課税世帯、あるいはそれに準ずる世帯(家庭の経済状況)
- 進学先で学ぶ意欲がある学生であること(しっかりした進路への意識、進学意欲)
住民税非課税世帯、あるいはそれに準ずる世帯
住民税非課税世帯というのはその名の通り、住民税が徴税されない、つまり所得が少ない世帯です。母子家庭で住民税非課税世帯、あるいはそれに準ずる世帯というのであれば、この条件はクリアです。
住民税非課税世帯、それに準ずる世帯とはどんな世帯のことを言うのかは、こちらが参考になります。
課税については市町村で変わりますので、条件になる所得については居住地の市町村に確認が必要です。
進学先で学ぶ意欲がある学生であること
学校に入ってからも継続してしっかり勉強をする意識、意欲があるか、目的ははっきりしているか、といったことが問われます。進学がゴールで入ったら勉強がおろそか、では制度の意味がなくなってしまうからです。
高校の成績が良いのに越したことありませんが、学ぶ意欲を確認するためのレポートを出さなくてはなりません。
文部科学省HPにある、大学等への修学支援の措置に係る学修意欲等の確認の手引き(大学等向け) には、学業成績、学習意欲に関する基準が以下の様に明文化されています。
学業成績・学修意欲に関する基準は、入学1年目から支援を受けようとする場合と、2年目以降から支援を受けようとする場合とで異なるため、それぞれの基準に該当するかどうかを判定すること。
① 入学1年目の者の基準
次のアからエのいずれかに該当すること。
ア 高等学校等の評定平均値が3.5以上であること
イ 入学者選抜試験の成績が入学者の上位2分の1以上であること
ウ 高等学校卒業程度認定試験の合格者であること
エ 学修計画書の提出を求め、学修の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できること
「いずれかに該当」とありますが、ア~ウに該当していても、エの提出は必須と考えて下さい。
また、この条件は毎年チェックされ、成績がよくなかったり学習意欲が乏しいと判断されると、打ち切りになるので、継続して勉強に励まなくてはなりません。
私立大学の学費免除、母子家庭が受けられる金額は?

学費免除支援には2つあります。
- 授業料・入学金の免除・減額
- 給付型奨学金
授業料・入学金の免除・減額
授業料、入学金とも、国公立大学、私立大学ごとに免除・減額の上限金額が決められています。
私立大学では、
入学金 | 授業料 | |
4年制大学 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約25万円 | 約62万円 |
で、これを超える場合は自己負担になります。完全な免除ではなくなりますが、それでも母子家庭にとってはかなりの負担軽減になりますよね。
給付型奨学金
授業料・入学金の免除・減額は国による支援(国が代わりに負担)ですが、給付型奨学金は日本学生支援機構による支援で、対象になる学生に返済の必要がない奨学金が支給されます。
- 自宅生 約46万円
- 自宅外性 約91万円
自宅生というのは、生計維持者(母子家庭でいうと母親)と一緒に住んでいる学生、自宅外性は一緒に住んでいない学生のことで、自宅外性の場合は生活費も支給に含まれています。
私立大学の学費免除を母子家庭の方が利用、申し込みは早めに
母子家庭の方で私立大学の学費免除を申し込みたいときは、かなり前から準備や申し込みを始める必要があります。また、在学する学校の協力も必要なので、利用を決めたらすぐに学校に相談しましょう。
申し込みのおおまかな流れと手順、日程は次のようになっています。(文部科学省HPより抜粋)

1年も前から準備が必要、ということですよね。また、JASSOというのは日本学生支援機構のことになります。
私立大学の学費免除は、母子家庭にとって大きな支援

学費免除はどの私立大学でも利用できるというわけではありません。対象になっている私立大学とそうではない私立大学があります。
学費免除が利用できる大学は、現時点で大学全体の98%(短大含む)なので、ほとんどの私立大学は利用できそうですが、確認は絶対に必要です。
私立大学の学費は大学によって幅が大きいので、今回紹介した学費免除の制度では不足することがあるかもしれませんが、利用すれば経済的な負担は少なくなるのは確実ですよね。
私立大学を目指す子供を持つ母子家庭にとって、この学費免除はとても助かる制度ではないでしょうか。