母子家庭になり、生活保護を受けることになると資産は持てないことから、住むところは基本的に賃貸物件になりますが、その家賃は生活保護の住宅扶助からまかなわれることになっています。
家賃は一般的に言って、郊外、農村部より都市部の方が高く、公共交通機関の駅に近い方がより高く設定されています。また、関東、関西といった大都市の方がそれ以外の地域よりも高いのもよく見られる傾向です。
そのため、支給される家賃も地域や交通の利便性などによって変えられており、全国一律、画一というわけではありません。また、家賃は毎月払う賃貸料ですが、生活保護で支給されるのはそれだけでなく、敷金など入居する時に支払う費用や賃貸物件の更新費、火災保険料などもまかなわれます。
母子家庭では、本人の仕事や子供の学校の都合などで簡単に住む場所を変えられないことが多いので、この家賃の支給は生活保護の中でも特に重要な扶助となっています。
ここでは、母子家庭の生活保護でまかなわれる家賃補助の対象、支給される金額についてみていきます。
生活保護を受けている母子家庭、家賃補助の対象は?
住宅扶助の対象になるのは、月々支払う家賃のほかに、入居時に不動産会社に支払う仲介手数料、敷金や礼金(いずれも支払う設定がある場合)、契約を更新する際の更新料、更新手数料です。また、住んでいるうちに畳や水道・配電設備などの修理が必要になったときの修理費も対象になります。
母子家庭で、仕事場が遠い、子供の送り迎えが必要などの理由で引っ越ししたい、といったケースでは、引っ越し費用もまかなわれることがあります。
生活保護を受けている母子家庭、家賃補助の対象にはならないのは?
物件に入居してから支払うことになる管理費や共益費は住宅扶助の対象にはなりません。また、水道代や電気代といった光熱費も補助の対象外です。これらは基本的に、住宅扶助と一緒に支給される生活扶助から支払うことになります。
母子家庭になると子供関係の出費が多くなり、生活扶助からの出費はできる限り少なくしたいので、管理費や共益費が家賃に含まれている物件を探すのも一つの手です。
生活保護を受けている母子家庭、家賃補助の支給額
1.家賃
家賃は、基準額、もしくは特別基準額のどちらかが適用されることになっており、家賃は住む地域、特別基準額は世帯数によって支給額は変わります。
・基準額
居住地の区分 | 支給額(月額) |
1級地 | 13,000円 |
2級地 | 13,000円 |
3級地 | 8,000円 |
級地というのは、住む地域によって物価や生活水準が変わることから、全国を大きく3つの区分に分類したものです。物価や生活水準が高い地域が1級地、安くなるにつれて、2級地、3級地となります。
・特別基準額
家賃が上記の基準額を超える場合は、特別基準額に基づく家賃が適用されることになっており、世帯数によって変わります。
世帯数 | 支給額(月額) |
2~6人 | 限度額x1.3 |
7人以上 | 限度額 x 1.3 x 1.2 |
限度額は地域と級地から決まり、物価や生活水準が高い地域になるほど金額は高く設定されています。代表的な都道府県の限度額は下表のようになっています。(金額はいずれも月額です)
居住地(都道府県) | 1級地、2級地 | 3級地 |
北海道 | 29,000円 | 24,000円 |
東京都 | 53,700円 | 40,900円 |
神奈川県 | 46,000円 | 43,000円 |
長野県 | 37,600円 | 31,800円 |
愛知県 | 37,000円 | 36,000円 |
京都府 | 41,000円 | 38,200円 |
大阪府 | 42,000円 | 30,800円 |
広島県 | 35,000円 | 33,000円 |
香川県 | 設定なし | 33,000円 |
福岡県 | 32,000円 | 26,500円 |
沖縄県 | 32,000円 | 32,000円 |
また同じ県内でも、地域によって物価や生活水準が大きく変わる場合は、市単位で限度が設定されています。(金額はいずれも月額です)
居住地 | 1級地・2級地 | 3級地 |
札幌市 | 36,000円 | 設定なし |
横浜市 | 53,700円 | 設定なし |
名古屋市 | 35,800円 | 設定なし |
京都市 | 42,500円 | 設定なし |
大阪市 | 42,000円 | 設定なし |
広島市 | 42,000円 | 設定なし |
福岡市 | 37,000円 | 設定なし |
郡山市 | 設定なし | 30,000円 |
いわき市 | 設定なし | 30,000円 |
自分の住む地域の限度額は、厚生労働省のホームページにある「住宅扶助について」を見ればわかるようになっています。また、この表の限度額は平成25年に制定され、現在適用されている金額ですが、物価変動や社会情勢によってまた改定される可能性があるので、必ず確認するようにします。
現実的には基準額の家賃ではとても住む所を見つけることはできないので、特別基準額に沿って家賃が支給されることになります。
2.敷金、礼金
生活保護を受けるために新たに住む場所を契約することになった場合、敷金や礼金が必要なときは、上記の特別基準額の3倍を上限として支給されます。3倍以内のときは、かかった実費が支給されます。
3.契約更新料
住んでいる住宅の契約更新に際し、契約更新料や更新手数料、火災保険料が必要になるときは、上記の特別基準額を上限とし、実費が支給されます。
4.住宅維持費
住んでいる住宅の水道や電気の設備の修理が必要になった時の費用や、一般的な住宅の補修費、畳などの耐久消耗品の修理などにかかる費用は支給されることになってます。
生活保護を受けている母子家庭、家賃が支給額を超えたら?
家賃や敷金、礼金など、家賃補助で定められた金額はいずれも上限で、実際にはかかった費用までしか支給されませんが、その上限を超える場合は、基本的に生活保護の他の扶助、生活扶助から支払うことになります。
ただし、家賃の支給額の上限を超える所に住む場合は、超える金額がわずかであれば問題とされることはあまりありませんが、大きく超えるとケースワーカーから、転居するように言われることがあります。
生活扶助も生活ぎりぎりの金額しか支給されていないからで、あまりにも支給額の上限を超えると、生活保護そのものの条件に当てはまらないのでは、と再調査されることがあります。
もし生活保護を受ける前に賃貸に住んでいた場合、その家賃が生活保護の家賃補助を超えるとき、補助の範囲内で暮らせる所に引っ越す必要があります。
母子家庭で子供の学校や子供が通う病院が遠い、といった理由があると、補助を超える家賃に住むのを認めてもらえることもあります。
また、敷金、礼金が決められた上限を超えてしまう場合は、家賃のように超える金額は自己負担とはならず、支給されません。そのため、もし住もうと考えている住居の敷金、礼金が支給額の上限を超える場合は、その範囲内に収まる住居に変える必要があります。